コミュニティ活動事例

vol.7 パークホームズ稲毛小仲台 Residential Greeting ご近所付き合いの心がけは、防犯・防災にも効果的

居住者あいさつ会
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新しい住まいへの引越し、特にはじめての土地へ移り住む人にとって、気になるのは「ご近所付き合い」。ご近所で困った時に助け合える関係性を持っておきたい方も多いはず。しかし、総務省の平成25年度の調査では、近所付き合いの程度について「あいさつをする程度でほとんど付き合いがない」が64.8%と現実は厳しいようです。(今後の都市部におけるコミュニティのあり方に関する研究会中間報告(資料編) http://www.soumu.go.jp/main_content/000224816.pdf)。

こうした状況の中で、「理想」と「現実」の距離を縮める取り組みが、「Residential Greeting」居住者あいさつ会です。マンション管理会社の三井不動産レジデンシャルサービス(株)とコミュニティ支援を専門とするステップチェンジ(株)の協力のもと、三井不動産レジデンシャル(株)が居住者同士のコミュニケーションのきっかけ作りを行っています。

イベント当日の様子

千葉県の稲毛駅が最寄駅となる、パークホームズ稲毛小仲台は総戸数331戸、バーベキュー用スペースもある広い中庭が特徴の大規模マンションです(全戸分譲済)。「Residential Greeting」はマンションの共用部で2~3フロア毎に2日間で5回実施し290名の居住者の方々にご参加いただきました。

「この会が終わるまでに顔と名前が一致する人を20人以上作りましょう」ステップチェンジ(株)の沼田さんが司会進行役を務めます。

周囲と協力しあって回答! 防災の知識も深まる○×クイズ

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会の前半は、まだまだ緊張気味

マンションといっても、大規模であればちょっとした町のようなもので、初めましての方ばかり。会場はまだ笑顔も少なく、静かな状態です。ここから知り合いを作っていくためには、まず緊張をほぐしていく必要があります。そこで、手始めに司会者が、参加者にとって共通の話題である「パークホームズ稲毛小仲台」のクイズを持ちかけます。座席をいくつかグループ分けして、相談しながら○×で答えてもらいます。
1問目は「このマンションの総戸数は300戸より多い?」という、住んでいる方にとっては簡単(?)な問題から。「ご存じですか?」「これ知ってます。たしか331戸だったはず」などと周囲にいる家族同士で声を掛け合います。

その後、クイズはマンションの防災と防犯についての内容に。マンションの防災備蓄品に含まれているものについて「紙おむつはある?」「カセットコンロは?」「コピー用紙は?」といった問題に「どうでしょうね」「知らないけど、(備蓄品として)あって欲しいよね」「なさそうな気がする」などなど意見を出し合って相談し、回答していきます。

印象的だった問題は「窃盗犯が犯行を止めた理由で最も多かったのは“声をかけられたから”だった? (答えは○)」。これは日ごろから住民同士でコミュニケーションをとるように心がけていれば、犯罪を未然に防げることを証明しています。このようなクイズを通して、災害時に備えて日頃からどんな準備が必要なのか、意外に役立つ便利なものは何かなどを知ってもらい、防災や防犯についての意識を高めてもらうこともこの会のねらいだとか。

盛り上がる自己紹介タイムの秘密は「9つの扉」

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「9つの扉」で自己紹介を始める参加者のみなさん

後半は、事前に配られた「9つの扉」というツールを使って、自己紹介と情報交換。最初は男女別、次は部屋番号順といくつかのグループを作って交流を楽しみます。

「9つの扉」は以下のようなテーマで書き込みをするようになっています

  • (表紙)名前と部屋番号
  • (1の扉)どちらから引越してこられましたか?
  • (2の扉)このマンションの魅力は?
  • (3の扉)今日の会に期待していることは?
  • (4の扉)普段はどちらに出かけますか?
  • (5の扉)近所でよく行くお店は?
  • (6の扉)最近ハマっていることは?
  • (7の扉)こんなことできます!やってみたい!
  • (8と9の扉)メモ欄
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膝を突き合わせる距離も縮まり、
それぞれの円はさらに小さくなっていきます

小さな円を作り、膝と膝を突き合わせて各自自己紹介。みなさん一人ひとり真剣に耳を傾けて話を聞いていました。一人でも多くの顔見知りを作ろうと、話を聞きながらメモをとる方の姿も。最初は緊張した様子でも、時間が経つにつれて会話は弾み、大きな笑い声が聞こえてくるようになります。

たとえば2の扉である「マンションの魅力」という話題では、「共用部が良かった」という意見にみなさんが賛同。「キッズルームがある」「中庭でこどもが友達を作れそうだなと思って」「緑が多いのが良いですよね」などこのマンションならではの魅力を共感し合うことで、距離が近づいている様子でした。

4~5の扉である「おでかけスポット」の話題では駅近くの大型ショッピングモールがダントツ人気でしたが、そのほか、近くにあるメロンパン専門のパン屋さんの話が出ると「美味しいですよね~!」と盛り上がったり、「○○ってスーパーが安い」とか「近くのやきとりの店はカレーも美味しい」といった穴場の情報が披露されると「へー、今度行ってみよう」「それって場所どのあたりですか?」とみんな興味津々で情報交換。男性同士ではスポーツの話題が盛り上がり、「野球は○○のファン」とか「駅前のジムってどうですか?」なんて会話も聞こえてきました。

「共用部でヨガ教室とかあったら参加したい」「以前デザインの仕事をしていたので、キッズルームでお絵描き教室とかできるかも」と今後の交流にも意欲を見せる方が多く、約1時間半の交流会は「時間が足りなかったかも……?」と思うほど大盛況のまま終わりを迎えました。

最後は参加者全員で大きな輪になり、一組ずつ改めて自己紹介。「小さな子どもがいるのでぜひお友達になってください」「地方から越してきてまだ周辺の事を全然知らないので、教えて欲しい」と呼びかける家族も。

帰る前に会場に置かれた部屋番号入りの「ごあいさつボード」にそれぞれ名前と家族構成、簡単なあいさつを添えたシールを貼ってもらいます。このボードはイベント終了後もしばらく掲示され、残念ながら参加できなかった居住者も、ご近所にどんな方がお住まいかが分かります。

終了後、参加者の方に感想を聞いてみると「参加して良かった」「またぜひこういう機会があれば参加したい」「早速知り合いができて嬉しい」といった声をたくさん聞くことができました。

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Aさんご一家(写真左) Kさんご一家(写真右)

ご主人の父方の実家が千葉にあり、川崎市から越してきたというAさんご一家(写真左)は駅の看板をきっかけに物件を知ったそうです。「中庭があって、景色も綺麗だし、公園や小学校も近いのが魅力」と語り、周囲の方とも楽しそうにお話されている姿が印象的でした。奥様は今、バルコニーで育てたミントでハーブティーを飲むのにハマっているそう。

Kさんご一家(写真右)は早速同じフロアのご家族とバーベキューのお話が進んでいるのだとか。「大きなマンションだとあまり周囲と関係がとれなかったけれど、今回こういう機会があって話をするきっかけになり、お互いを知ることができました。しっかりと顔見知りになれたという感じです」とお話してくださいました。

挨拶会の中盤には、参加したお子さんたちのためだけのスペシャルプログラムとして、“中庭”を会場としたクイズラリーも開催されました。子どもたちは「Greeting BINGO」と書かれた用紙のヒントをもとに、散策しながら隠された問題を見つけ出します。このクイズラリーでは、楽しみながら防災倉庫や備品倉庫の場所を確認したり、中庭に植えられている植物について学べるような工夫がされています。

ご近所付き合いの始まりは、小さな“きっかけ作り”から

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三井不動産レジデンシャルサービス(株) 石黒 貴也さん

「マンションを管理していくなかで、居住者間のコミュニティというものを非常に重視しています。その最初のきっかけ作りをしたい」そう語るのは、このイベントに協力している三井不動産レジデンシャルサービス(株)の石黒 貴也さん。「最初のクイズのあたりではみなさんまだ半信半疑という感じでしたが、後半の“9つの扉”では話し始めると活き活きとしていて、生活に密着した話題をちりばめているのが良かったのだと思います。終わった時の笑顔が印象的ですね」と手ごたえを感じている様子でした。

石黒さんによると、毎回イベントの開催後には参加者の方から「またこのようなイベントを定期的にやって欲しい」という要望が多く寄せられるのだそう。
「そういったお客様からの要望もあり、今後は消防訓練などさらに防災や防犯をメインとしたイベントも必要になってくると思います。今回は防災備蓄について、クイズに盛り込んでご紹介しましたが、あくまでもさわりという感じでしたので、今日のような企画を発展させて取り組みを行っていきたいですね。ありきたりなイベントではなく、いかに参加者が楽しめる形にできるかが課題です」と石黒さんは意気込みます。
今後のマンションの自治活動のあり方についても、「我々がきっかけをつくり、意識付けを行うことでみなさんの中に活きていき、共助につながるのではないかと思っています」と語ってくださいました。

2014年に開催された三井不動産レジデンシャル(株)のイベント「Mirai Mansion Meeting」にて、参加者に行ったアンケートでは「ご近所にお醤油を借りられますか?」という質問に対するYESの回答者は62%、「逆に、ご近所の方からお醤油を貸して欲しいと言われたらあなたは貸せますか」という質問では96%がYESと回答しています。このように、「自分から行動することはハードルが高いけれど、相手からのアプローチは問題なく受け入れることができる」という結果をみると、実は、ご近所やお隣同士でもっとコミュニケーションをとりたいと思いながらも、機会を逃してしまっている方がたくさんいるのかもしれません。
毎日の挨拶など、そのちょっとした行動がご近所付き合いの大きなきっかけになり、いざという時に助け合える関係性に繋がります。ご近所付き合いが難しいと思っている方も、少しだけ勇気をだして、声掛けから始めてみてはいかがでしょうか。